新しい産業・社会システムを創出するセンシング技術
エバラ時報,No.230, 巻頭言(2011) ■はじめに テレビ討論などを聞いていると、最近は暗澹とした気分になることが多い。日本経済は、円高の進展や新興国の台頭による海外競争力の低下、少子高齢化や生産拠点の海外移転による国内生産力の空洞化などによって、バブル崩壊以降、本格的な景気回復を果たせずいる。もどかしい限りである。日本経済の再生に必要なのは、一時しのぎの景気対策ではなく、将来を見すえた抜本対策であるという意見は、経済専門家ならずとも、きわめて当然に思われる。 いろいろな抜本対策の中でも、21世紀の人類危急の課題である環境・エネルギー、食糧・水、医療・介護などの課題の解決を新しい産業として育成していくことが必要である。さらに、日本が得意とする最先端技術を活用することで、競争力の高い新しい産業や社会システムを創出することが可能となる。センシング技術もその一つである。一時ほどではないが、情報技術(IT)には安心・安全で快適な未来社会を構築することへの期待がある。この期待に応えるためには、21世紀の人類危急の課題の解決に、ITと融合したセンシン